契約書の条項

前ページのサンプルを見ていただくと、本文はいくつかの条項から成り立っているのが分かります。
これらの条項は、ほとんどすべての契約に記載されるものと、取引の種類に応じて追加されるものがあります。
ここでは、各条項に分けて説明します。

1,必ず必要になる条項

【契約の目的】

当事者が、何についてどのような取引をするのかを明確にする。

【契約の対象・金額】

金額の改ざんを防止するため、数字の前に「金」、後ろに「円」などの通貨単位を記入する。税込・税別の旨も記載する。
契約の目的が「物」である場合は、対象物を明確に記載する。
労働契約など、「物」以外を目的とする場合は、その内容をはっきりさせる。後でトラブルにならないよう、目的の範囲をできるだけ特定することが望ましい。
契約書に目的物を記入するスペースがないときは、別紙の目録等に記載してもよい。

【契約金の支払い方法と期限】

現金、手形、銀行振込などの支払い方法を記載する。銀行振込の場合は、振込手数料をどちらが負担するかも記載する。

【権利の移転時期、発生時期】

契約で定めた権利がどの時点から発生するのかを記載する。
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【諸費用の負担】

手数料や印紙代など、契約に付随して発生する費用の負担割合。
もし記載がなければ、双方の当事者が折半する。
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【契約の履行期限・存続期間】

契約で合意した内容をいつまでに行うかの期限、または契約の有効期限。
契約を結んだものの、相手が履行してくれない場合に備える。
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【解除】

一旦成立した契約を、どのようなときに、どのような方法で解除できるかを記載する。
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【裁判管轄】

契約を巡ってトラブルが起きて裁判になった場合に、どの裁判所に訴訟を提起するかを記載する。
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2,必要に応じて定める条項

*ここでで掲げた項目が全てではありません。契約で決められた権利・義務について全て契約書に記すようにしましょう。

【損害賠償の予定】

債務の不履行により損害を受けた当事者が、請求できる損害賠償額をあらかじめ決めておくことができる。
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【危険負担】

物の取引に関する契約で、天災などの不可抗力により目的が果たせなくなったときに、どちらの当事者が負担するかについての取り決め。
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【担保責任】

売買契約について、売買の目的物にすぐには気づかない欠陥(瑕疵)があったとき、売主の責任についての定め。
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【期限の利益喪失】

所定の期限まで、債務の履行をしなくてよいことを、期限の利益という。
継続的に続く取引契約については、債務者に一定の事情が発生すると期限の利益を失わせる規定を置くのが一般的。
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【原状回復】

契約の対象物が、契約終了・契約の解除により元の持ち主に返還されるときに、契約当初の状態に戻すことを約束する取り決め。
不動産関係の契約で多く見られる条項。
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【条件・期限】

契約の効力発生・消滅の時期に関して、一定の条件または期限を付けることができる。
そのような取り決めがあるときはその旨を記載する。
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【秘密保持】

取引上知り得た相手方の秘密情報やノウハウを外部に漏らさないようにする取り決め。
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【免責事項】

契約に関わる不測の事態に備え、契約当事者が責任を負う範囲を明確にする定め。
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詳細説明

【権利の移転時期・発生時期】

個人間で自動車を売買すると仮定します。
4月1日に契約合意、4月3日に買主への引渡し、4月5日に代金の支払い、4月10日に名義変更がされたとします。
このとき、自動車の所有権はいつ移転するのでしょうか?
法律上は、当事者の意思の合意があったとき、とだけ決められており、客観的に明確な基準がありません。
そのため、上記のようなケースだと、それぞれの行為時に所有権の移転があったと考える余地があります。
お店で買物をするような、支払いと引渡しが同時に行われるときには問題になりにくいですが、契約行為に時間差があるとトラブルになることがあります。そのため、どの時点で所有権が買主の元へ渡るのかを明確にしておくことが重要です。
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【諸費用の負担】

契約を結ぶにあたり、様々な手数料や印紙代などの諸費用が発生する場合があります。
それらの費用は原則として当事者双方の負担になりますが、それと異なる定めをすることも可能です。
例えば、不動産の売買契約では、登記費用を買主が負担するのが一般的です。
双方で折半する場合でも、後で揉めることの無いようにその旨を明記しておいた方が良いでしょう。
なお、注意を要するのが「債務者が弁済をするにあたり要した費用」は、原則債務者の負担になるということです。(弁済とは、債務の支払・履行をすること。)

具体的には、以下のものが挙げられます。

・契約にかかる費用:印紙代、書類の作成費用など
・弁済にかかる費用:振込手数料、荷物の送料、交通費など

なお弁済に要する費用についても、当事者間で合意した内容があればそちらが優先されます。

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【契約の履行期限・存続期間】

履行期限は、一回で終わる契約についての規定です。
売買契約で、買主が後から気が変わって代金の支払いを怠るなどした時に、売主がいつまでも契約に縛られないために必要です。
一方の存続期間は、賃貸借など一定の期間続く契約類型についての規定です。
継続的取引において、期間の定めのない契約を結ぶことも可能ですが、契約終了時の事を考えると避けたほうが無難です。
当面期間を決めたくない、という場合は、仮の期間を定めた上で、自動更新の条項を付けた上で、契約期間中の解除についての規定を置くと良いでしょう。

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【解除】

一度成立した契約を後から取り消すことを、契約解除と言います。
契約解除をするには、次の条件を全て満たさなければなりません。(これを法定解除と言う。)

1,約束の期限が来ているのに、相手が契約を守らないこと(履行遅滞であること)
2,一定の期間を定めた上で、相手方に履行を催告すること(*)
3,2で定めた期間を過ぎても、相手方が履行しないこと

*ただし、契約を履行できないことが明白であるなど、例外的に催告なしで解除できる事もあります。

このように、いったん結んだ契約というのは自己の都合で簡単に解除することができません。

しかし、当事者の合意により、解除できる条件をもっと緩くしたり、逆に厳しくしたりすることができます。
全く条件を付けずに、当事者の自由意志により解除ができるようにすることも可能です。
解除の条件だけでなく、解除の方法も決めることができます。例えば、履行の催告なしで、内容証明郵便による通知のみで解除できる、などです。契約で解除の条件を指定することを、約定解除と言います。

実務的には、相手が破産するなど、契約が守られない状況に陥ったときには催告なしで解除を認める条項が多く見られます。

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【損害賠償の予定】

相手が契約を守らない(債務不履行という)に陥ったとき、それにより受けた損害賠償を相手方に請求することができます。でも、具体的に受けた損害額を決めるのは、そう簡単ではありません。

こんな事例を考えてみましょう。ある会社が、自社製品を得意先に運搬することを運送会社に委託したとします。
ところが、運送会社の不注意により、製品が全て紛失してしまいました。
製品の調達に要した金額を損害として認定するのは問題ありません。
でもそれにとどまらず、運搬を依頼した会社が、製品の納期に間に合わせることができなかったため、得意先との取引を中止されてしまったら・・・

将来得られるはずの売上も、損害賠償の一部になる可能性があります。
話し合いで損害賠償の金額で折り合いがつかなければ、最後は裁判をするしかありません。
このような不便を避けるため、あらかじめ損害賠償が生じた場合の額を契約で決めておくのです。
また、運送会社側の立場として、損害賠償が天井知らずの額になるとリスクが大きくなり過ぎます。
損害賠償の予定は、責任の上限を決めるという意味でも有効です。

予定する損害の金額は、金○○円と直接定めるほか、履行期間を過ぎた日から年率○○%といったように、遅延損害金として定める方法もあります。

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【危険負担】

契約成立後、双方の当事者に責任がないにも関わらず、契約の目的が達成できない事態が有り得ます。
不動産の売買を例に説明しましょう。
ある建物について売買契約が成立した後、引渡しをする前に大地震が発生し、建物が倒壊してしまうと、もはや売買契約を履行することができなくなります。このとき、建物の売主は購入代金を請求できるのか?
このケースのように、

1,契約当事者に責任(帰責性)がなく、
2,契約成立後に履行不能になった(後発的不能)

場合にどちらが損失を負担するかという問題を、危険負担の問題と言います。
先ほどの例を考えてみると、建物が使えなくなったのに購入代金だけ支払わされるのはおかしいのでは、と思われます。
ところが、法律の規定を当てはめると、買主は購入代金を支払わなければなりません。でも、これでは買主にとってあまりにも不利であり、なんら合理性がありません。
そこで、契約であらかじめこのようなリスクについての取り決めをすることが普通です。
通常は、所有権の移転と同時に危険負担も移転するという内容にすることが多いです。

なお上記の例で、契約成立前に実は建物が既に壊れていた、というケースでは、危険負担の問題にならずそもそもの契約が不成立となります。(原始的不能)

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【担保責任】

売買契約において、取引が終了した後に、売買品に何らかの不具合・欠陥が見つかることがあります。
なんらかの不具合や欠陥のことを瑕疵(かし)と言います。そして、購入時にはすぐに発見できないような瑕疵を、「隠れた瑕疵」と呼びます。

売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは売主が責任を負いますが、この責任のことを担保責任と言います。売買契約では、隠れた瑕疵があった場合の対処を取り決めることが重要です。
なお、法律上の担保責任の内容は次の通りです。

1,買主は売主へ損害賠償請求ができる
2、瑕疵の存在により、契約の目的が達成できないときは、契約の解除ができる
(ただし解除を選択したときは、重ねて損害賠償請求はできない)
3,損害賠償請求または解除は、隠れた瑕疵を発見してから1年間だけ可能

これによると、目的物が修理すれば直る場合や代品で取り替えができる場合であっても、買主はそれらの請求ができないことになります。必要であれば、これらの処置を取れるように契約書に明記しておきましょう。また、買主の権利行使期間を変更することもできます。

以上は売買契約についての説明でしたが、担保責任は有償契約(何らかの対価を支払う契約)について適用されることがあります。一例として、製造委託契約や建築請負契約などが挙げられます。

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【期限の利益喪失】

期限の利益とは、債務者が所定の期限までは契約の履行を猶予されるというメリットのことです。

期限の利益喪失とは、一定の事由が起こった場合にそのメリットを失わせ、直ちに債務者に履行を要求できるとする規定です。
利益喪失の事由としては、債務不履行、手形不渡りなど債務者の支払い能力に問題が生じることを指定します。お金の貸し借り(金銭消費貸借)や、一定期間継続する取引では必ず必要な条項です。

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【裁判管轄】

契約を巡って裁判になった場合、どの裁判所に訴訟を提起するかが問題になります。
個人や民間企業による契約トラブルは民事訴訟という種類の裁判で扱われます。
民事訴訟は、被告(訴えられる側)の住所地を管轄する地方裁判所(訴訟の額が140万円以下なら簡易裁判所)に対して提訴するのが原則です。
原告と被告の住所が比較的近ければ特に問題ありませんが、双方が遠隔地に居住していると、裁判所に近い方が費用・時間の面で有利に働きます。そこで、訴訟を起こす裁判所の管轄を事前に決めるメリットがあるわけです。
裁判管轄の規定は、そのつもりが無くても決まり文句として入れておくようにしましょう。
なお、契約書で指定できる管轄は第一審裁判所だけで、第二審以降は変更できません。

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【原状回復】

主に不動産に関する取引でよく使われる条項で、契約満了や契約の解除により物件を明け渡す際に、契約当時の状態に戻すことをいいます。

まず、原状回復とは「借りた当時の状態に戻す」という訳ではない事に注意して下さい。
借主が通常の使用方法により自然に損耗する部分は、貸主の負担で修理・修繕しなければならないのが原則です。
自然損耗による部分についても、借主の負担で原状回復するという特約を置くこともできますが、その旨を明確に記載しないと無効とされます。

また、たとえそのような特約があっても、借主に過大な負担を強いる内容であれば、特約の効力を否定される可能性があります。

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【条件・期限】

契約の効力の発生・消滅について、条件や期限を付けることがあります。

条件:将来起こりうる事象(起こらないこともある)

成就したときに効力が発生する条件を、停止条件と言います。
例) 大学に合格したら、自動車を与える。

成就したときに効力を消滅させる条件を、解除条件と言います。
例) 大学を留年したら、仕送りを打ち切る。

期限:将来に確実に起こる事象

いつ起こるのかが前もって分かる事実にかからせることを、確定期限と言います。
例) 2020年12月31日になったら、借金を返済する。

いつか起こるのは確実だが、時期が特定できない期限を不確定期限と言います。
例) 次に年号が変わった時に、宝石を贈与する。

条件や期限を付ける際には、それが条件なのか期限なのかをはっきりわかるようにしないと後に困ることがあるので注意しましょう。

(元請→1次下請→2次下請)

という順に仕事の依頼があった場合に、1次下請が「元請から入金があったときに請負代金を支払う」という約束をしたとします。
この書き方だと、もし元請が倒産してしまったら、代金の支払義務そのものが無くなるように読めてしまうので、きちんと区別する必要があります。

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【秘密保持】

契約にあたり、相手方に秘密にしておきたい情報を開示しなければならないことがあります。
対象となるのは、雇用契約、共同開発契約、商品の仕入れ契約などが考えられます。

そのような場合に情報漏洩を防ぐには、契約書に秘密保持条項を入れるようにします。
また、取引を開始するのに先立って、本契約の前に秘密保持契約を先に交わしておくこともあります。
秘密保持には、次の点に注意するようにして下さい。

1 秘密情報を出来る限り具体的に特定する
2 契約終了後、いつまで相手を拘束するかを明記する
3 情報を開示する相手に対し、その情報を利用できる範囲、利用方法を指定する。

なお、拘束期間を無期限とすることはできないので、秘密情報の価値が失われると思われる合理的な期間で定める必要があります。

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【免責事項】

契約の一方当事者が、サービスや商品を提供したことにより損害を引き起こした場合に、その責任の全部または一部を免れるという条項を、免責事項と言います。 ただし、免責事項があれば常に負担を負わないと言う訳ではなく、強行規定に違反しているときなどは無効になります。

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